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Tさんの家

足柄下郡真鶴町

35坪

2024年竣工

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真鶴町には「美の基準条例」なるものがある。


まち並みに溶け込む建物を作り、美しいまちを守っていくためのガイドラインである。


べからず法である建築基準法に比べ、能動的なその条例には敬意を払いたい。


これは冊子になって真鶴町役場などで売られていて、確か2,000円くらいだったか。


さっそく購入し、美の基準条例とやらを熟読。

現地の環境に落とし込むことを試みる。

丘のてっぺんにあるTさんの家。

屋根の形状や勾配はなるべく土地の形状に沿い、景観や風の邪魔をしないものにしたいと思った。





Tさんの家は、二世帯が同居する家。

世帯間の距離感に最大限の配慮をし、丁寧に聞き取りをさせていただいた上で、小さく作ることを試みる。


省エネ、コストの観点からも小さく作ると良い点がある。が、今回はそういったことと共に、将来親世帯が施設に入るなどした場合、使わない空間が多い家を若い世帯が長い間に渡って管理しなければならない。


これは意外と大変だと思う。


不動産的視点で考えると、都心や利便性の高い地域などであれば親世帯を分離して貸すという選択肢も得られるかもしれない。


だがこの場所は、そうもいかないのだ。

だから、維持していくことと、流れる時間の違う両世帯の距離感。という両側の視点をもって、家のサイズ感を見つける事を大切にした。





また、2020年から2024年という時期は、誰にとっても大変な時期であった。

建築業界も資材高騰の波にのまれ、この家の建築にも例外なくその波が容赦なく押し寄せた。


設計、あるいは工事の最中に資材の価格が上がるのだ。


言った話、聞いていた金額が、ひと月もたてば違う話になっている。

だから、工事中にたくさんの変更があった。








例えば、リビングの吹き抜けの天井仕上げは、設計時にラワン合板だったものが工事中に変更となり新建材になったり。


それでもみんなの頑張りと踏ん張りで素敵な形に収まったし、Tさんにも頑張っていただいた。





ふとした時に窓を覗くと、窓から青々とした海が見える。

反対側の窓からは、緑の山の稜線が見える。

そんな家だ。

こういった小さな事を、私は幸せに感じてしまう。


だから、「窓から何がみえるかな?」を大切にしている。

そしてそれを考えるのが楽しい。




これから10年、20年たって自然素材の部分が、経年美化し、味わい深くなってくれる事を期待する。 Photo ©️ Yoko Fujiwara

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